北ヤード



写真学校の学生だった頃、JR大阪駅から阪急中津駅付近まで、一直線の空き地だった。大阪駅周辺は空き地やJR貨物の広大な敷地によって分断されており、ツインタワーで有名なスカイビルは、前述した貨物の敷地の地下にある薄暗く汚らしい長いトンネルを通らずにはアクセスできないのだ。夕方、スカイビル方面で仕事を終えたサラリーマンはトンネルを通り、空き地に設けられた不気味なフェンスの傍を列をなして大阪駅方面に向かって歩いてゆく。そんな風景が僕の制作に少なからずヒントを与えていた。

空き地の名は北ヤード先行開発区域と言う。(確か)
今月、この一直線の広大な空き地は超高層ビル群となり遂にオープンを迎える。

不気味なフェンスは取り払われ、頭上を超高層のビルが立ち並ぶ。正に風景は一変した。

この地区のすぐ横手には昔ながらの呑み屋やDVD試写店などが軒を連ねている。そんな街並みの中からふと視線を上げると、誇らしさを誇示するような、インターコンチネンタルの大きな文字が、街を見下ろしていた。

街は激変する。
それも短時間で。
4年や5年など言葉以上にあっという間に過ぎるものなのだ。

北ヤード開発の本丸は、営業を終えたJR貨物の敷地だろう。

そしてその開発が終わる頃、おそらく僕はとっくに30歳を超えている。

時間は不可逆でまた有限であり、なによりその進行スピードは自覚しているよりも速い。

後悔せず人生を終えるために、今何をすべきなのか。



僕は久しぶりに歩いたこの街並みを眺めながら、深く考えさせられる事となった。



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